2022年ニュースリリース

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日立金属株式会社

高耐食ニッケル基合金 金属積層造形材料 ADMUSTER® C21Pの量産適用

~ステンレス(SUS316L)よりも100倍以上の耐食性を示す金属積層造形品の実現に貢献~

 日立金属株式会社(以下、日立金属)は、複雑な造形を可能にするなど注目が高まる金属積層造形(金属3Dプリンター)向けに、高耐食、高強度を実現できる材料として、金属積層造形材料ADMUSTER®シリーズを開発し、特性が生かせるさまざまな分野へ展開を開始しています。特にADMUSTERシリーズの中でもニッケル基合金ADMUSTER® C21Pは、ステンレス(SUS316L)よりも100倍以上*1の耐食性を示す金属積層造形品をつくることを可能とします。半導体製造装置や薬品中間体製造、石油・ガス等のエネルギー関連施設や化学プラントなど高い耐食性が要求される分野において、信頼性向上による操業停止リスク低減、部品交換頻度の低減が可能になるだけではなく、部品製造リードタイムの短縮やCO2削減にもつながることから、お客様からの期待が高まっており、この度、お客様での量産適用も開始されました。

1.背景

 積層造形(3Dプリンター)は、金型や組み立てを不要とし、複雑形状品の製造を低コストで可能とするなどモノづくり技術を変革する技術として注目が高まっています。また近年では、COVID-19拡大や地政学リスク等に起因したサプライチェーン分断時の緊急代替品製造のほか、CO2削減対策としても利用が進んでいます。また、注目が高まる中で、ステンレスやニッケル基合金、アルミニウム合金などの既存材料だけでなく、積層造形の特長を生かした新しい材料開発も積極的に進められています。
 日立金属では、コーポレート研究所である「グローバル技術革新センター Global Research & Innovative Technology Center(略称:GRIT)」を中心とし、積層造形“ならでは”の材料開発を進めており、高耐食、高強度に優れる材料の一部を金属積層造形用材料ADMUSTER®シリーズとして展開し、その特長が生かされるさまざまな分野への提案を行っています。

2.概要

  • 写真:金属積層造形材料 ADMUSTER®
    金属積層造形材料 ADMUSTER®

 耐食性に優れるADMUSTER® C21Pは、日立金属桶川工場が開発した鍛造圧延用高耐食ニッケル基合金MAT21®を積層造形用粉体として開発した材料で、現在、日立金属で展開している金属積層造形用材料の中でも最もPRE*2が高い材料の一つです。ADMUSTER® C21Pを材料とする積層造形品は、MAT21®鍛圧材*3と同等の耐食性を持ち、強度と硬度にも優れることが確認されました(表1、表2)。ステンレスの中でも耐食性が高いSUS316Lの鍛圧材とC21Pまま材(積層造形しただけの試験片)の比較では、腐食速度が1/100以下(耐食性が100倍以上)となる結果が得られました。
 化学プラントや半導体製造工場では、腐食性が高い流体を扱うため、設備に使用される部品の耐食性が重要になります。耐食性を高めた部品を使用することで、信頼性向上による操業停止リスク低減、部品交換頻度の低減が可能になります。さらに積層造形は、金型製作や組み立てを不要とし、製造個数が少ない部品の場合は製造リードタイムの短縮化にもつながります。これらの特長により、低コスト化が可能になるだけではなく、部品の製造プロセスで発生するCO2の削減にもつながることから、お客様からの期待が高まっており、この度、ADMUSTER® C21Pを材料とする金属積層造形部品の量産適用が開始されました。

 日立金属は、今後もADMUSTER®シリーズを、耐熱性、耐摩耗性、耐食性、高機能性などが要求される分野向けにラインアップを揃え、展開しいくことで、お客様の課題解決やCO2削減に貢献してまいります。

表1 ADMUSTER® C21P積層造形と各種鍛圧材の各種酸性水溶液中の腐食速度比較*4

(mm/year, 試験時間24時間)

  C21P
造形まま材
C21P
溶体化材
C21P
時効処理材*5
MAT21®
鍛圧材
Alloy22
鍛圧材
SUS316L
鍛圧材
PRE*2 82 70 26
1% HCl boiling 0.01 - - 0.01 0.13 24
2% HCl boiling 0.01 0.01 0.01 0.05 1.72 51.2
5% HCl boiling 1.6 - - 1.15 7.95 199.3
30% HF room temp. 0.06 - - 0.08 - -
10% H2SO4 boiling 0.03 0.03 0.02 0.04 0.23 69.4

表2 ADMUSTER® C21P積層造形と各種鍛圧材の機械的特性*4

項目 C21P
造形まま材
C21P
溶体化材
C21P
時効処理材*5
MAT21®
鍛圧材
0.2%耐力, MPa 623-758 416-424 952 381
引張強さ, MPa 885-1030 890-905 1440 812
硬さ, HV10 288-323 206-209 428 180-200
*1
日立金属試験値
*2
PRE:耐食性を示す指標 Pitting Resistance Equivalent number, PRE = Cr + 3.3 (Mo + W/2) +16N
*3
MAT21®鍛圧材:高耐食ニッケル基合金MAT21®を素材とする鍛造または圧延された材料
*4
いずれの値も代表値であり保証値ではありません。
*5
時効条件(約600℃, 30時間以上)

以上

【お客様からのお問い合わせ】
日立金属株式会社 金属材料事業本部AM ソリューションセンター 担当 足立 e-mail hajime.adachi.mz@hitachi-metals.com

【報道機関からのお問い合わせ】
日立金属株式会社 コミュニケーション部 担当 吉原 TEL 090-2567-6359

ご参考

金属積層造形材料 ADMUSTER®の主なラインアップ

耐食材料

  • 高耐食・高強度合金
    ADMUSTER®-C00P

    溶融法では作りがたい多元系合金(CoCrFeNiTiMo系)を積層造形で構造体に適用。多元系/ナノ析出物により強度特性と耐食特性を両立、調質により強度・硬度と延性の調整が可能。

    高耐食・高強度合金ADMUSTER®-C00P

  • 高耐食ニッケル基合金
    ADMUSTER®-C21P

    鍛造圧延材で幅広い環境への耐食性に実績を有するニッケル基合金を金属3Dプリンタに適用。鍛造圧延材と同等の耐食性を有し、より高い機械強度を実現。

    高耐食ニッケル基合金ADMUSTER®-C21P

  • 硬質粒子分散型クロム基合金
    ADMUSTER®-C574P

    耐食性と耐土砂摩耗性に優れた硬質粒子分散型合金を開発。Crの高濃度化により優れた耐食性を実現。

    硬質粒子分散型クロム基合金ADMUSTER®-C574P

高強度材料

  • 積層造形用
    低Coマルエージング鋼粉末
    ADMUSTER®-W285P

    特定化学物質(管理第二類物質)の対象外となる1%以下のコバルト量でも一般的なマルエージング鋼と同等の強度を有し、積層造形での取り扱いが容易です。

    積層造形用低Coマルエージング鋼粉末ADMUSTER®-W285P

  • 積層造形用
    高強度マルエージング鋼粉末
    ADMUSTER®-W350P

    一般的な造形用300(ksi)級マルエージング鋼より高硬度に調整可能なマルエージング鋼です。

    積層造形用高強度マルエージング鋼粉末ADMUSTER®-W350P