2017年ニュースリリース

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日立金属株式会社

高ロバスト性Ni-Zn系ソフトフェライト材料「ND57S」を新たに開発

 日立金属株式会社(以下 日立金属)は、外部応力や温度変化に対する信頼性を向上させた、高ロバスト性※1Ni-Zn系ソフトフェライト材料「ND57S」を開発しました。「ND57S」は、一般家電製品に比べ厳しい環境下での特性安定性(ロバスト性)が要求される自動車の機能性および安全性の向上に貢献します。

1.背景

 日立金属は、自動車用電装部品をはじめとするさまざまな電子回路に搭載される軟質磁性材料の一つとして、ソフトフェライトコアを製造・販売しています。磁心(コア)材料として安定した品質を高く評価いただいており、多くのお客様に採用されています。
 近年、IoT技術で用途が拡大しているセンシングおよびアンテナ技術は、厳しい環境下での特性安定性(ロバスト性)が必要とされており、その基幹部品であるコイルを形成するソフトフェライトコアには、応力、温度変化へ対応する特性が求められています。特に自動車用途(キーレスエントリーシステムやタイヤ空気圧センサー)は、使用環境が厳しく、樹脂モールド時の外部応力や使用温度変化に対するインダクタンス※2の安定性要求も厳しくなっています。

2.概要

  • 写真:高ロバスト性Ni-Zn系 ソフトフェライト材料「ND57S」
    写真:高ロバスト性Ni-Zn系
    ソフトフェライト材料「ND57S」

 このたび日立金属が新たに開発したNi-Zn系ソフトフェライト材料「ND57S」は、日立金属独自の技術により、フェライト主組成の適正化と、焼成プロセス改良による結晶組織の微細化を実現し、従来材に比べ外部応力・温度変化に対するロバスト性能を向上させました。
 「ND57S」をキーレスエントリーシステムやタイヤ空気圧センサー用アンテナのコアに用いることにより、小型化、高性能化および高信頼性への貢献が期待できます。
 「ND57S」が新たな製品ラインナップに加わることで、日立金属は、これまで以上にお客様の製品設計に応じたニーズに、幅広くお応えしていきます。
 日立金属は、今後も新規材料開発に注力するとともに、電子部品のさらなる高効率化、信頼性向上、小型軽量化に貢献します。

■「ND57S」の特長(日立金属 従来品「ND50S」比較)

(1) 温度-40℃から100℃において、インダクタンス変化が少ない
(参考:-40℃および100℃における相対温度係数※3(20℃基準)を約50%低減)

(2) 樹脂モールド後も、温度変化に対してインダクタンス変化が少ない
(参考:インダクタンス変化率(20℃基準)を-40℃で約80%、100℃で約40%低減)

3.製造拠点

日立フェライト電子株式会社、日立金属(香港)有限公司 番禺工場

4.用途

自動車関連アンテナ用コア材

5.特許

基本特許出願済み

以上

【お客様からのお問い合わせ】
日立金属株式会社 特殊鋼カンパニー担当 相牟田 TEL 03-6774-3471

【報道機関からのお問い合わせ】
日立金属株式会社 コミュニケーション室 担当 車谷 TEL 03-6774-3075

<補足説明>

■フェライトコア材料「ND57S」特性一覧 (参考値)

標準コア形状 ND57S (開発品) ND50S (当社従来品)
相対温度係数 α µ ir
周波数 100kHz
-40℃~20℃ 1 x10-6 -2 x 10-6
20℃~100℃ -1 x 10-6 -2 x 10-6
初透磁率 µi
周波数 100kHz
570 500
キュリー温度※4 145℃ 150℃

■樹脂モールド後の自動車関連アンテナ用コアの特性比較 (参考値)

コア形状:2 mm x 16 mm x 1 mm
巻線仕様:φ0.23 mm 45ターン
ND57S (開発品) ND50S (当社従来品)
インダクタンス変化率
周波数 100kHz
-40℃~20℃ 0.4% 1.9%
20℃~100℃ -1.7% -2.9%

<用語解説>

※1 ロバスト性 :
応力や環境の変化といった外部要因の変化を内部で抑制する性質のこと。
※2 インダクタンス :
電磁誘導の大きさを表す単位であり、誘導起電力が電流の変化する速さに比例するときの比例定数のこと。
※3 相対温度係数 :
温度を変化させた時の1℃当りの透磁率の変化を初透磁率で割った値のこと。
※4 キュリー温度 :
強磁性体が常磁性体に、もしくは強誘電体が常誘電体に変化する転移温度のこと。