2016年ニュースリリース

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日立金属株式会社

高周波特性に優れた新しいソフトフェライトコア材料を開発

 日立金属株式会社(以下 当社)は、このたび、高周波特性に優れたソフトフェライトコア材料「ML91S」を開発し、量産体制を整えました。ネットワーク機器や自動車、スマートフォン搭載部品のさらなる小型軽量化、省エネ化が期待されます。

1.背景

 IoT の促進やビッグデータの活用といった情報処理の高機能化が求められる近年では、サーバーなどネットワーク機器の大容量・高速化が求められています。さらには、環境への親和意識が一般的なものとなり、省エネへの期待が高まっています。ネットワークサービスの中核であるデータセンターでは、施設全体のエネルギーの高効率化および空調費の節減が課題となっているため、ネットワーク機器の小型化、低発熱化、サーバー電源における半導体の高周波化、高効率化が求められており、使用するトランスやインダクターなどの受動部品についてもその要求性能が高まっています。特に、500kHz 領域のスイッチング周波数から数MHz 程度の高周波領域にてトランスやインダクターを駆動させた場合、主要部材における磁心(コア)材料の磁心損失*1 が高いため、電力変換効率が低下し熱が発生しやすくなります。この熱の拡散を抑え、周辺部品の動作を安定させるためには、上記周波数領域において磁心損失が低いコア材料が求められています。

2.概要

 このたび当社が開発したソフトフェライトコア材料「ML91S」は、高周波領域(1-5MHz 近傍)での低磁心損失化に優れたMn-Zn 系フェライト材料です。当社独自の粉末制御技術と熱処理技術により、通常高周波領域で使用されるNi-Zn フェライト材料よりも飽和磁束密度*2 が高く、かつ高周波数領域における低磁心損失化に優れたMn-Zn フェライト材料の開発を実現することができました。また、実際の使用環境に近い高温環境下(80-100℃近傍)での低磁心損失化に優れていることからも、消費電力の低減のみならず発熱量を抑えることも可能です。
 本製品の使用により、トランスやインダクターの高周波化と低損失化の両立が可能となり、ネットワーク機器の小型化、省エネ化が実現します。将来的には、自動車電装部品や携帯端末をはじめとしたさまざまな電子部品への適用も期待されています。
 高温特性に優れたソフトフェライトコア材料「ML91S」が当社ラインナップに加わることで、これまで以上に世の中の幅広いニーズに応えることが可能となります。今後とも当社は、素材の特性を引き出す材料開発に注力するとともに、電子部品のさらなる高効率化、信頼性向上、小型軽量化に貢献していきます。

■「ML91S」の特長

周波数1MHz から5MHz において、特に駆動時に50mT 以下の高磁束密度領域で低損失な材料
(参考:周波数2MHz 磁束密度50mT(100℃)における磁心損失を、当社従来品「MB28D」比、約1/10 に大幅低減)

3.生産状況

 量産体制:整備済み
 生産拠点:日立フェライト電子株式会社、日立金属(香港)有限公司番禺工場

4.特許

 1件出願済み

以 上

【お客様からのお問い合わせ】
日立金属株式会社 高級金属カンパニー 担当 相牟田 TEL 03-6774-3471
【報道機関からのお問い合わせ】
日立金属株式会社 コミュニケーション部 担当 車谷 TEL 03-6774-3075

<補足説明>

■高周波フェライトコア材料「ML91S」の特性一覧

  ML91S(開発品) MB28D(当社従来品)
磁心損失
  周波数1MHz
  磁束密度50mT
100℃ 100 kW/m3 1,500 kW/m3
磁心損失
  周波数2MHz
  磁束密度50mT
100℃ 700 kW/m3 6,800 kW/m3
飽和磁束密度 100℃ 435 mT 440 mT
初透磁率 900 2,800
電気抵抗率 8.0 Ωm 8.0 Ωm
キュリー温度*3 280 ℃ 240 ℃

<用語解説>

  • *1
    磁心損失とは、磁心(コア)を特定の周波数の磁界の中に置いた時に失われるエネルギー損失のことです。磁心損失が大きくなるとエネルギー損失が大きくなります。
  • *2
    飽和磁束密度とは、材料が持つ磁力の強さを表す物理量で磁性材料の性能の基本となる尺度のひとつです。材料を磁化した時の磁化の程度を磁束密度と呼び、値が大きいほどコアの小型化、および大電流下での使用が可能となります。材料を磁化するに伴いそれ以上磁化しない限度を飽和磁束密度と呼びます。
  • *3
    キュリー温度とは、強磁性体が常磁性体に、もしくは強誘電体が常誘電体に変化する転移温度のことです。