2012年 旧 日立電線ニュースリリース
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臨界電流密度特性を約1.5倍高めたNb3Sn超電導線材の開発
日立電線株式会社はこのたび、内部拡散法*1 とシングルスタッキング構成を用いることにより臨界電流密度特性*2 を約1.5倍に高めたNb3Sn超電導線材*3 を開発しましたので、お知らせします。
Nb3Sn超電導線材は、主にNMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)分析装置やITER(国際熱核融合実験炉)のような核融合設備において高い磁場を発生させるコイル用線材として使用されており、主にブロンズ法という製法によって製造されております。ブロンズ法は、ブロンズ(Cu(銅)-Sn(錫)合金)の中にNb(ニオブ)芯を多数本組み込んだビレットを、押出、伸線加工により細線化し、これに熱処理を加えることで、ブロンズ中のSnをNbに拡散させNb3Snを生成するものです。
近年、分析装置の高精度化に伴うマグネットの高磁場要求により、超電導線材のさらなる臨界電流密度特性向上が求められております。ブロンズ法では、ブロンズ内のSn濃度を高めることで臨界電流密度特性の向上を図ってきましたが、ブロンズ内に含有できるSn濃度にも限界があるため、臨界電流密度特性を高める新たな製造方法が課題となっておりました。
こうした中、このたび当社では、内部拡散法とシングルスタッキング構成を用いることにより臨界電流密度特性を約1.5倍に高めたNb3Sn超電導線材を開発しました。
今回開発した超電導線材は、ブロンズに代わり、Sn単体を用いた内部拡散法と呼ばれる製造方法を用いるとともに、Nb単芯線とSn単芯線を一度だけ多芯組み込みするシングルスタッキング構成を採用した超電導線材です。従来のブロンズ法に比べ、ブロンズ内のSn濃度に制約を受けないため、高い臨界電流密度特性を得ることが可能です。また、ブロンズに比べ加工性に優れる材料構成(Nb、Sn、Cu)であることから、伸線工程における中間焼鈍を省略することも可能となり、ブロンズ法に比べて線材の製造期間の短縮が可能です。
今回、840本のNb単芯線と421本のSn単芯線によってできた線径1.31mm、長さ5kmのNb3Sn超電導線材を18T(テスラ)の磁場で測定した結果、従来のブロンズ法に比べ約1.5倍の345A/mm2の臨界電流密度特性を有することを確認しました。
今後、当社では、さらなる臨界電流密度特性の向上に向けた超電導線材の研究・開発に取り組むとともに、超電導事業の拡大・強化を図ってまいります。
以上
今回開発したNb3Sn超電導線材の断面構成
線径1.31mmのNb3Sn超電導線材の断面写真
*1 内部拡散法とは、銅の中に錫とニオブを配置し、伸線加工した後に熱処理をする超電導線材の工法のことです。
*2 臨界電流密度とは、単位面積あたりに抵抗値ゼロで流すことができる最大電流値のことです。
*3 ブロンズ法を用いた当社製Nb3Sn超電導線材を18テスラの磁場で比較した場合において。