2010年 旧 日立電線ニュースリリース
このニュースリリース記載の情報(製品価格、製品仕様、サービスの内容、発売日、お問い合わせ先、URL等)は、発表日現在の情報です。予告なしに変更され、検索日と情報が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。
次世代リチウムイオン二次電池用の高強度・高耐熱圧延銅箔を開発
日立電線株式会社はこのたび、負極活物質*1 に珪素などの合金系材料を用いた次世代のリチウムイオン二次電池(以下、「リチウムイオン電池」といいます)への適用に向けた「高強度・高耐熱圧延銅箔」を開発しましたので、お知らせします。
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、小型軽量であるという特長が高く評価され、モバイル機器を中心に利用されています。特に最近では、ハイブリッド自動車などの動力源に採用され始めたほか、風力発電や太陽光発電などの蓄電池用途に向けた開発が進んでおり、今後も大きな成長が見込まれております。
当社は、銅条で培った圧延技術を活かし、1997年よりリチウムイオン電池の負極材向け圧延銅箔の量産を行っております。現在、モバイル機器などの民生用途にご採用いただいているほか、車載用途についても量産を開始しており、今後、採用拡大が見込まれます。
近年、高性能CPUやGPU*2 を搭載したノートブックパソコンやスマートフォンなど消費電力の高いモバイル機器が普及しております。これらに電力を供給するリチウムイオン電池は、これまでより一層の高エネルギー密度化を求められております。高エネルギー密度化を実現する手段の一つとして、負極集電体である銅箔の表面上に固着させた負極活物質に、現在主流の炭素系材料と比べて充放電容量の高い珪素などの合金系材料を用いる方法があります。しかしながら合金系材料は、炭素系材料に比べて充放電時の体積変化が大きく、充放電を繰り返すたびに、銅箔に応力を生じさせ、負極活物質と銅箔が剥離することにより寿命が短くなる問題がありました。このため合金系負極活物質の体積変化に耐えられる強度の高い銅箔の開発が課題となっておりました。
そこで、このたび当社は、負極活物質に合金系材料を用いた次世代リチウムイオン電池の長寿命化を実現するために、強度と耐熱性を高めた「高強度・高耐熱圧延銅箔」を開発しました。
リチウムイオン電池の負極材に用いられる銅箔は、限られたスペースの中で高エネルギー密度化を実現するために厚さ8~10マイクロメートルの薄い銅箔を用いることが一般的となっており、次世代リチウムイオン電池においても同様の薄さが求められます。このことから本開発においては、高耐力と高い加工性を両立する銅合金「HCL02Z」*3 を選定しました。HCL02Zは、ジルコニウムを0.02%含んでおり、従来の負極材に用いられた銅純度の高い圧延銅箔や電解銅箔に比べ高い強度と高い耐熱性を持っております。このためリチウムイオン電池の製造プロセス中で軟化することなく高強度を維持します。また、負極活物質との密着性をより高めるために、圧延銅箔に新たに表面処理を施しました。試作電池を用いた評価試験においても、塑性変形をせず、電解銅箔を用いた場合に比べ、10%以上も電池寿命が優れることが確認できました。
今回、合金系負極活物質の体積変化に対応できる強度を持つ高強度・高耐熱圧延銅箔を開発したことにより、モバイル機器などの民生機器において次世代リチウムイオン電池の実用化が見込まれるほか、ハイブリッド自動車等の車載用途でも需要が期待されます。今後、当社では、用途拡大に向けリチウムイオン電池に最適な圧延銅箔の開発に注力してまいります。
*1 | 活物質とは、電池内において電解質との化学反応によって、電子を放出したり、取り込んだりする性質を持った物質のことです。 |
*2 | GPUは、Graphics Processing Unitの略です。 |
*3 | HCLは、日立電線株式会社の登録商標です。 |
HCL02Zの代表特性
組成 | Zr:0.02、Cu:残 |
---|---|
引張強度(N/mm2) | 450 |
導電率(%IACS) | 97 |
厚み(µm) | 6min. |
幅(mm) | 570max. |
参考:リチウムイオン電池の構造