2007年 旧 日立電線ニュースリリース
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65ルーメン/ワットの高輝度赤色LEDチップを開発
日立電線株式会社(以下、「当社」といいます。)はこのたび、LED*1 支持基板での光吸収損失を低減するため、金属反射膜を設けた高発光効率アルミニウム・ガリウム・インジウム・リン(AlGaInP)赤色LEDチップを開発し、従来構造のLEDチップよりも発光効率が約5倍高い65ルーメン/ワット*2 を達成しましたので、お知らせします。
LEDは電気を直接光に変換できる半導体固体素子です。カラーフィルターを用いずに特定の色の光を取り出せる利点と低電圧で駆動できる利点とを活かして、各種機器のインジケータ用光源として広く利用されてきました。近年、LEDの発光効率向上や、青色と緑色のLEDが実用化されたことにより、交通信号灯や自動車のリアコンビネーションランプ、屋外大型ディスプレイパネル等、様々な表示・照明用光源として急速な広がりを見せております。
これまで当社では、赤色LED用化合物半導体ウェハとして、アルミニウム・ガリウムひ素(AlGaAs)エピタキシャルウェハに加えて、AlGaInPエピタキシャルウェハを製品化してきました。これらのエピタキシャルウェハの表面に電極を形成し、サイコロ状にカットするとLEDチップにすることができます。しかしながら、この従来構造のLEDチップはGaAs基板による光吸収損失が大きく、発光効率は赤色で12ルーメン/ワット程度が限界でした。
そこで、当社ではLEDチップ中に金属反射膜(Metal Reflector, 「MR」)を設けた新たなチップ構造を開発しました。まず、低欠陥AlGaInPエピタキシャルウェハを準備し、金属反射膜を設けた支持基板へ発光層を貼り付け、貼り合せたウェハからガリウムひ素(GaAs)基板を除去することによって、支持基板上に発光層を備えた構造を形成しました(図「金属反射膜(MR)形成プロセス」、「赤色LEDチップの構造模式図(チップ断面)」参照)。この構造により支持基板側での光吸収を防ぎ、発光効率65ルーメン/ワットを達成し、従来構造のLEDチップに比べ約5倍の高効率化に成功したものです。
このたび当社が開発したLEDチップは、高い発光効率により、日中に屋外で色合いを鮮明に識別できる用途等に利用することができ、屋外大型ディスプレイでは鮮やかな表示が可能となります。また、自動車用リアコンビネーションランプでは様々なデザインのランプを実現できます。さらに、従来のLEDチップでは発光効率不足により実用化が困難であった液晶パネルバックライト光源など幅広い表示・照明用途への適用が期待できます。
当社では、今後、事業化を視野に入れ、量産技術の確立を目指すとともに、さらなる発光効率の向上を図ってまいります。
以上
*1 | LEDはLight Emitting Diode(発光ダイオード)の略語です。 |
*2 | ルーメン/W:電力1W当りの光束への変換効率。光束(単位ルーメン)は人間の目の可視光線への感度を考慮した光の単位です。白色光源の場合、白熱電球は10ルーメン/ワット、ハロゲンランプは20ルーメン/ワット、蛍光灯は60ルーメン/ワット程度です。 |
金属反射膜(MR)形成プロセス
(1)低欠陥AlGaInPエピタキシャルウェハを準備する |
(2)金属反射膜を設けた支持基板へ発光層を貼り付ける |
(3)貼り合せたウェハからGaAs基板を除去する |
赤色LEDチップの構造模式図(チップ断面)
LEDチップ外観 サイズ単位:µm
(a)従来構造LED (300×300×360) |
(b)金属反射膜(MR)LED (300×300×210) |