2006年 旧 日立電線ニュースリリース

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超臨界アルコールを使った架橋ポリエチレンのリサイクル処理を低コストで実現する連続処理技術を開発
-NEDO委託研究-

 このたび日立電線株式会社は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の基盤技術開発促進事業の委託研究として、電力ケーブルの製造、廃棄時に発生するシラン架橋ポリエチレン屑を、再び電力ケーブルの絶縁材料としてリサイクルする方法の実用化に向けた生産技術の確立に取り組み、リサイクル処理を低コストで実現する連続処理技術を開発しました。

 電力ケーブル等から廃棄されるシラン架橋ポリエチレンの総量は、国内では年間約1万トンに上ると予想されます。これらのほとんどは現状、燃料化あるいは埋立処理されていますが、地球環境の保護や資源の有効活用のためには、廃電線の被覆材料を原材料として再利用するマテリアルリサイクルを行う必要があります。これに対し、当社は2004年に株式会社日立製作所、独立行政法人産業技術総合研究所および株式会社日本製鋼所の協力を得て、熱可塑性を持たない廃シラン架橋ポリエチレンを超臨界アルコール*1 (図1)と接触させることで、廃シラン架橋ポリエチレンを溶融成形可能な熱可塑性のポリエチレンに変化させる方法を見出しました(図2)。
 しかし、従来の超臨界アルコールを用いたポリマー処理は、高圧ポンプとチューブ状の反応管を組み合わせて処理するプロセスが一般的であり、この方法では原料のポリマーを微粉砕しなければならず、また、処理されるポリマーに対して高温に加熱した溶媒を大量に必要とするため、処理費用が高くなるという問題を抱えておりました(図3)。そのため、この方法を実用化するには、低コスト生産が可能な連続処理技術の開発が必要とされていました。
 当社は、低コスト生産に関する基盤技術の研究を進めてきた結果、樹脂の混練や成形に用いる押出機を超臨界流体の反応容器として用い、この押出機に超臨界アルコールを注入し、架橋ポリエチレンのリサイクル処理を連続して行う技術を開発しました(図4)。この方法によれば、ポリマーを微粉砕する必要はなく、ペレット*2 程度の大きさのものを押出機に直接供給することが可能であり、また、溶媒量が少なくて済むため、処理に必要なエネルギーを大幅に節約することが可能です。
 今回開発した超臨界流体を用いる連続処理技術は、リサイクルのみにとどまらずポリマーの変性による新しい材料開発やバイオマス利用など、広範囲の産業分野に波及効果が期待できます(図5)。なお、本成果は、独立行政法人産業技術総合研究所および国立大学法人静岡大学の協力を得て研究開発を行ってきた結果であり、今後もこれらの研究機関と協力してテスト装置の実用性と安全性についてさらに研究を進め、実用化を目指してまいります。

*1 超臨界アルコール:超臨界状態とは、気体と液体が共存できる限界の温度・圧力(臨界点)を超え、気体と液体の密度が同じになり2相が区別できなくなった状態のこと。超臨界アルコールは、気体の拡散性と液体の物質溶解性を合わせ持っているため、反応溶媒としてさまざまな効果を持っている。
*2 ペレット:5mm前後のプラスチックの小球、粒。

以上

図1 超臨界流体 (アルコールの状態図)

  • 図1 超臨界流体 (アルコールの状態図)

図2 シロキサン結合の化学反応

  • 図2 シロキサン結合の化学反応

図3 連続処理方法の比較

  • 図3 連続処理方法の比較
*スラリー 水や有機溶剤などの溶媒に粉体状の固体を分散させたもの

左図:(a) システムの外観 右図:(b) システムの図解
図4  超臨界アルコールによるシラン架橋ポリエチレンの連続処理装置

  • 図4

図5 押出機を用いた超臨界流体用連続プロセスへの期待

  • 図5 押出機を用いた超臨界流体用連続プロセスへの期待