2004年 旧 日立電線ニュースリリース

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超臨界アルコールを使った架橋ポリエチレンのリサイクル技術を開発
-NEDO 委託事業-

 このたび当社は、株式会社日立製作所、独立行政法人産業技術総合研究所および株式会社日本製鋼所の協力を得て、電力ケーブルの絶縁体として利用された廃シラン架橋ポリエチレンを超臨界アルコール(注1)と反応させることにより、再び電力ケーブル用絶縁材料としてリサイクルすることが可能となる技術を開発しました。


 近年、地球環境保護に対する関心が高まるなか、家電リサイクル法を始めとする各種リサイクル法が施行され、企業の責任として廃棄物のリサイクルを進めることが求められています。電線・ケーブル分野においても、廃電線の被覆材料を原材料として再利用するマテリアルリサイクルが重要な課題になっていますが、電力ケーブルの絶縁体として大量に使用されているシラン架橋ポリエチレンは、ポリエチレンの分子間の架橋結合により溶融成形が困難なことから(表1)、マテリアルリサイクルが進んでいないのが現状です。


 そこで当社では、架橋ポリエチレンを溶融成形可能な熱可塑性のポリエチレンに戻し、再び電線被覆材料として用いるための検討を行ってきました。
 その結果、高温高圧の超臨界状態のアルコール中に架橋ポリエチレンを入れることで、シラン架橋ポリエチレンを、溶融成形が可能な熱可塑性のポリエチレンに変化させる技術を開発しました。
 量産方法についても検討を行い、図1に示すように押出機に超臨界アルコールを注入する方法を用いれば、連続的に熱可塑性のポリエチレンを生成できることを確認しました。生成したポリエチレンは、再び押出成形することが可能で、低圧の電力ケーブルの絶縁材料として十分使用可能な特性を備えています。
 また、この量産技術は、超臨界流体で固体原料を経済的に連続処理する方法として、架橋ポリマーのリサイクルのみにとどまらず、広範囲の産業分野に大きな波及効果が期待されます。


 本件について当社は、今後、静岡大学、独立行政法人産業技術総合研究所および株式会社日本製鋼所と協力し、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の基盤技術開発促進事業の委託事業としてテスト装置を製作するとともに、安全性、安定性についてさらに研究を進め、実用化を目指してまいります。


(注1)超臨界アルコール:超臨界状態とは、気体と液体が共存できる限界の温度・圧力(臨界点)を超え、気体と液体の密度が同じになり2相が区別できなくなった状態のこと。超臨界アルコールは、気体の拡散性と液体の物質溶解性を併せ持っているため、反応溶媒としてさまざまな機能を有している。

表1:シラン架橋ポリエチレンおよびポリエチレンの構造

  • 表1:シラン架橋ポリエチレンおよびポリエチレンの構造 図1:押出機を用いた連続処理実験装置

図1:押出機を用いた連続処理実験装置
押出機にアルコールを注入して超臨界状態とし、シラン架橋ポリエチレンと反応させる。

  • 図1:押出機を用いた連続処理実験装置

図2:再生ポリエチレンで製造した電線の外観
(導体断面図 2平方ミリメートル 絶縁体厚さ 0.8mm)

  • 図2:再生ポリエチレンで製造した電線の外観