2003年 旧 日立電線ニュースリリース

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銅系ヒートシンク材L-COPの熱特性を改善

 このたび当社は、各種半導体デバイスのヒートシンク材として2000年に製品化したL-COP(Low Expansion Copper)の熱特性を大幅に改善しました。

 L-COPは、高熱伝導性の銅マトリックス中に、低熱膨張性のCu2O(亜酸化銅)粒子を分散させた複合材です。これは、Cu2O含有量およびその分布を変えることにより、熱伝導率を90~390W/m・K*1、熱膨張率を8~17×10-6/K*2の範囲で制御することが可能な材料として、株式会社日立製作所日立研究所において開発され、当社が製品化した銅系ヒートシンク材です。
 これまでL-COPは、粉末冶金法により製造されてきましたが、さらなる高熱伝導化、低熱膨張率化を図るために、製造方法として熱間押出技術の適用を検討しました。その結果、熱間押出によりCu2O粒子を押出方向に配列させ、方向によって異なる熱特性(熱的異方性)を持たせることが可能となり、従来方法で製造したL-COPと比べ、熱伝導率を30%以上、熱膨張率を10%以上改善しました。特に熱伝導率の向上率が大きいのは、熱間押出により、熱の通り道となる銅相の結晶連続性が向上したためです。

 熱間押出によって製造したL-COPの熱的異方性を生かした使用例としては、パワーモジュールのヒートシンクが代表的です。この場合、L-COPの押出方向を、半導体チップに垂直な方向、すなわちヒートシンクの厚み方向にし、また、押出直角方向を、半導体チップの平面方向に配置させます。これにより半導体チップの発熱をチップに垂直な方向に効率良く放散させることが可能です。また、チップの平面方向において、L-COPの熱膨張率が小さいため、絶縁板とL-COPの熱膨張率の差に起因する熱応力が緩和され、モジュールの信頼性が向上します。

 L-COPと同様な働きをするヒートシンク材としては、Cu-W(銅―タングステン)合金やAl-SiC(アルミニウム―炭化ケイ素)複合材などがすでに実用化されていますが、いずれも材料コストや製造コストが高く、さらに加工が難しいことから形状も板状などに限られていました。これらの課題を解決するため開発されたL-COPは、今回の熱特性改善により、特性面でも優位に立つことができます。

*1 単位長さあたり1℃の温度差がある時、単位時間に単位面積を移動する熱量
*2 1℃上昇する毎に膨張する長さ方向の割合

以上