2003年 旧 日立電線ニュースリリース

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青紫色レーザー用2インチ窒化ガリウム基板を開発

 このたび当社は、Blu-ray Disc等の次世代光ディスクに用いられる青紫色レーザー用の2インチ直径低欠陥単結晶窒化ガリウム(GaN)基板の開発に成功し、サンプル製造、販売を開始することにいたしました。
 Blu-ray Discの規格が日米欧の大手AV機器メーカー9社によって策定されたことにともない、信号の読み出し、書き込みに主として用いられる、GaN系の青紫色レーザーの仕様も固まりつつあります。このレーザーを製造するための基板として、レーザー素子の信頼性向上、生産歩留まり向上の観点から、2インチ直径の低欠陥なフリースタンディング単結晶GaN基板の早急な実用化が求められています。
 従来、このフリースタンディングGaN基板は、サファイア等の下地基板の上にGaN単結晶を成長させ、その後下地基板を除去して作成されてきました。しかし、2インチ以上の大直径になると、GaN基板にダメージを与えることなく、下地基板を簡単・完全、かつ再現性よく除去することが困難でした。

 このたび当社は、このフリースタンディングGaN基板の画期的な製法として、ボイド形成剥離法(Void-assisted Separation Method:VAS法)と命名した新規技術を開発し、2インチ直径の低欠陥フリースタンディングGaN基板の開発に成功しました。
 このVAS法は、サファイア基板とGaN成長層との間に、網目構造を有する窒化チタンの薄膜を挟み込んで結晶成長を行います。このとき、窒化チタン膜の界面にミクロンオーダーの微小なボイド(空隙)を多数形成し、GaN結晶にダメージを与えることなく、大面積のGaN結晶を簡単に剥離させることを可能にしたものです。本技術は2インチ直径GaN基板の製法として非常に再現性がよく、将来の大型化も可能です。
 また、サファイア基板上にGaNを成長させると、サファイアとGaNとの格子定数差に起因して、多数の転位が発生します。しかしVAS法では、挿入する窒化チタン膜が格子歪の緩和層としても機能するため、GaN結晶への転位の発生を抑えることができます。既に当社では、直径2インチの基板内全面で、均一に106cm-2台前半という低欠陥密度を達成し、さらに105cm-2台到達への見通しを得ました。これは、従来法でサファイア上へ成長させたGaN結晶の1,000~10,000分の1の転位密度です。
 さらに、これまでのGaN基板は平坦な基板にするために表面の研磨が必要で、これによるダメージが問題でしたが、本基板は表面が平坦で研磨が不要です。このため、レーザーダイオード用のエピ成長やプロセス加工が容易という特徴があります。

 当社では、この2インチGaN基板サンプルの生産、販売を2003年春から開始する予定です。また、2004年中には、当社高砂工場において月産300枚の生産体制確立を目指します。これにより次世代光ディスク用青紫色レーザーの発展に大きく貢献していきたいと考えております。

以上