2002年 旧 日立電線ニュースリリース

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このニュースリリース記載の情報(製品価格、製品仕様、サービスの内容、発売日、お問い合わせ先、URL等)は、発表日現在の情報です。予告なしに変更され、検索日と情報が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。

低コスト長寿命の光ファイバ温度分布センサを開発

 このたび当社は、連続発振型のレーザ光源を利用して、低コスト、長寿命(10年)を実現した光ファイバ式温度分布センサCW-FTR(Continuous Wave-Fiber optic temperature laser Radar)を開発し、製品ラインアップに加えました。


 FTR(R)は、光パルスを一定周期で送出して、光ファイバからの後方ラマン散乱光*1を受信し、ラマン散乱光の強度が温度に依存する性質をもつこと、および、光パルスが光ファイバを往復する時間でラマン散乱光の発生場所がわかること、の2点から、光ファイバに沿った温度分布を測定するセンサです。

 従来のFTR(R)は、高出力のパルス発振レーザを使用していましたが、このレーザはピーク強度が強いために、一般通信用レーザと比べて寿命が短い(約3年)という欠点がありました。

 この欠点を改善するために、光パルスのピーク強度を低く抑える方法として、従来1つであった光パルスを、1周期にわたる多数の光パルス列に分割して送出する方法があります。しかし、従来のFTR(R)では、光パルスを送出する周期が、光ファイバを光パルスが往復する時間より短いと、遠端からの後方ラマン散乱光が戻ってくる前に、次に送出した光パルスにより発生した後方ラマン散乱光が戻ってきてしまい、光ファイバ全長の後方ラマン散乱光を独立した情報として測定することができませんでした。

 そこでこのたび、1つの光パルスを1周期の間に多数の光パルス列となるようにデジタル変調し、多数の光パルス列によって発生し重なって戻ってくる後方ラマン散乱光を光ファイバ各点の後方ラマン散乱光に復調する技術を開発したものです。これにより、光パルス送出間隔を、光パルスが光ファイバを往復する時間より短くしても、光ファイバ全長の後方ラマン散乱光を独立して測定できるようになりました(図1参照)。

 このため、高出力パルス発振レーザに代えて、一般通信で使用されている連続発振型(Continuous Wave)半導体レーザを光源として用いることが可能となり、光源の長寿命化(10年)を図ることができるとともに、これによりメンテナンスが容易になり、ランニングコストの低減が図れます。

 また、従来のFTR(R)で使用する光ファイバは、SM型光ファイバではコア径が小さいことから十分な光パルス強度を入射することが困難なため、コア径の大きいGI型光ファイバを使用していました。CW-FTRでは、従来と比べ弱いピーク強度の光パルスで測定ができるため、SM型光ファイバも使用できるようになりました。このため、通信用などの目的ですでにSM型光ファイバが敷設してある場合、温度測定用に新たに光ファイバを敷設する必要がないため、システムを低価格で構築できるメリットもあります。

 さらに、測定距離が2kmを超える長距離測定用FTR(R)では、光ファイバ伝送損失が最も小さい1.5μm帯の光パルスを使用しますが、従来は、十分な光パルス強度の半導体レーザがなかったため、高価な固体レーザを使用しており、FTR(R)の価格は高価なものにならざるを得ませんでした。CW-FTRでは、光パルス強度が弱くてよいため、1.5μm帯においても安価な半導体レーザが使用可能となり、従来品と比較して大幅に低価格にて提供することが可能となりました。

 当社は、FTR(R)(Fiber optic Temperature laser Radar)を平成元年から販売し、電力ケーブルの温度分布測定、電気設備の異常温度監視、各種プラントの温度監視用としてご利用いただいてきました。今回光ファイバ温度分布センサのラインアップを拡充することで、売上高を従来の年間5億円から年間10億円(2005年度目標)に引き上げたい考えです。

*1 光ファイバに光パルスを入射すると、一部が後方散乱光として再び入射端まで戻ります。ラマン散乱光は、後方散乱光の一部。

本製品の特長

(1)光源の寿命が長い(10年)
(2)メンテナンスが容易
(3)ランニングコストが安い
(4)SM型光ファイバをセンサに使用可能(既設SM型光ファイバの利用も可能)
(5)測定距離が2kmを超える場合、従来品より大幅に低価格
型式 FTR1000
センサ用光ファイバ SM
GI-50/125
光源寿命 10年
測定距離 5km
温度精度 ±2℃
測定周期 5分
標準価格*2 7百万円
*2 標準価格は、光ファイバの金額を含んでいない。

(図1)

図1

FTRは当社の登録商標です。

以上