2002年 旧 日立電線ニュースリリース

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このニュースリリース記載の情報(製品価格、製品仕様、サービスの内容、発売日、お問い合わせ先、URL等)は、発表日現在の情報です。予告なしに変更され、検索日と情報が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。

インバータサージ対応エナメル線を発売

 このほど当社は、インバータサージ対応エナメル線KMKEDシリーズを発売いたしました。

 近年の省エネルギー気運の高まりにより、各種電気機器において、省電力化、可変速制御化に適したインバータ方式による電源の制御・駆動の採用が増えています。
 通常モーターをインバータで駆動する場合、パルス波形の電圧が出力されます。最近、各種電気機器等で効率化やノイズの低減を図るために新しい素子が採用されていることの結果として、このパルス波形の立ち上がりがより急峻になっているため、過大な電圧、つまりインバータサージが発生するようになっています。
 例えば、産業用機器などで用いられる400V級インバータの場合、その出力電圧は通常600Vp程度(電圧上限値駆動の場合は、750Vp程度)ですが、インバータサージは出力電圧の2倍程度と高電圧となるため、部分放電が発生してしまいます。エナメル線のような有機絶縁材料は、部分放電がおこると、皮膜が分解されコイル絶縁に重大な損傷が発生し、電気機器の寿命が短くなる場合があります。
 そこで電機メーカー各社では、インバータサージの発生を抑制する検討を行ってきましたが、当社が開発したインバータサージ対応エナメル線は、インバータサージが発生した場合も、部分放電による絶縁劣化を抑制し電気機器を長寿命化できるため、電気機器の高い信頼性の保持に寄与できるものです。

新製品開発に使われた技術

 部分放電によるモーター用ワイヤの劣化を抑制するためには、絶縁材料としてセラミックのような無機物質が適していることが知られています。しかし無機物質は、有機物質と比較して、可とう性が悪く、またコイルに高速で巻く際に損傷を受けやすい等の問題があり、有機物質と無機物質のメリットをあわせた複合絶縁材料が有望視されてきました。

 しかし、一般的な有機物質と無機物質の複合法(有機絶縁ワニスと無機粉末の混合)では、無機粉末の分散性が悪くコイル巻時のストレスにより電気的・機械的欠陥が発生しやすいことから、技術的なブレイクスルーが求められておりました。
 そこで、このたび当社では、長年のエナメル線開発で培ったナノテクノロジー(ナノメートル単位の粒子を制御する技術)を駆使し、無機材料として採用したナノメータレベルのシリカ粒子を、エナメルワニス中に均一に分散させることに成功しました。この結果、耐部分放電性とコイル巻ストレスに耐え得る強靭性、柔軟性を持ち合わせた当社独自の「有機/無機ナノコンポジット*1絶縁材料」を開発し、エナメル絶縁皮膜に適用しました。
 この結果、エナメル線としての課電寿命を1,000倍以上(1.1kVp課電時、当社一般耐熱ダブルコートエナメル線比)にすることができました。また、実機モーターでの寿命評価においても課電寿命を300倍以上に向上させることができました(1.1kVp課電時、当社一般耐熱ダブルコートエナメル線比)。

 本製品は、高効率化に対応した産業用インバータ制御モーター、高電圧モーターのほか、電装分野でもHEV(=Hybrid Electric Vehicle)などへの採用も期待されます。
 当社としては、世界的な省エネルギーの要請に合致した本製品を巻線分野における世界戦略製品と位置づけ、省エネルギーの市場ニーズを先取りして製品ラインナップの拡充に努めてまいる所存です。

 なお、平成14年度の本製品の売上高は、5億円を目標としております。

*1 ナノコンポジット:ナノメートル(1mの10億分の1)レベルの複合材料

インバータサージ対応エナメル線の課電寿命特性(10kHz)

  • グラフの図

KMKED-20E

  • KMKED-20E

汎用耐熱エナメル線の部分放電侵食状況
(2ケ撚り試料によるインバータサージ課電試験後の断面写真)

  • 汎用耐熱エナメル線の部分放電侵食状況 (2ケ撚り試料によるインバータサージ課電試験後の断面写真)

「KMKED」シリーズの品揃え

1.耐熱クラス:200℃(AMW-XV、EIW-A相当)
2.標準サイズ:0.32~1.6mmf
3.荷姿:PT-60(60kg巻)、PT-270(270kg巻)
* 荷姿の大型化により、段取り替えの低減にも配慮しました。

本製品を製造している事業所

茨城県日立市川尻町4丁目10番1号 豊浦工場