2001年 旧 日立電線ニュースリリース

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摩擦攪拌接合による銅バッキングプレート量産化

 このたび当社は、摩擦攪拌接合技術を適用した銅バッキングプレートの量産に世界で初めて成功しました。従来製品よりも接合による変形が少なく、強度も優れた、本製品の特長をいかし、2001年度には銅バッキングプレート全体で年間約6億円の売上高を目指します。

 バッキングプレート(図1)とは、内部に冷却水路が設けられた放熱板で、液晶や半導体などの製造用スパッタリング装置*1 で使用され、冷却とスパッタ電極の役割を担うものです。バッキングプレートを製造する際は、内部の冷却水路を形成するために、本体に溝を掘り、蓋を接合します。その後、表面を切削加工により平滑に仕上げます。

 従来、この本体と蓋の接合には、電子ビーム溶接が使われてきましたが、電子ビーム溶接には、次の課題がありました。

(1)材料を溶融・凝固させるため、接合による変形が大きい。
(2)変形があるために、接合や接合後の表面切削加工に特殊な技術・ノウハウが必要である。
(3)接合装置が高価である。

 また、最近は大型液晶ディスプレイが出現することにより、バッキングプレートも大型化しており、さらに厳しくなる面平坦度に対する要求に応えるために、新しい接合方法の実用化が急務となっていたものです。

 摩擦攪拌接合の基本原理は、1991年にTWI(The Welding Institute/イギリスの公立溶接研究所、現TWI社)が発明したもので、回転する工具を接合する部分に挿入し、接合部に沿って工具を移動させることで接合します。接合する材料と回転する工具の間で発生する摩擦熱を利用し、摩擦熱で軟化した材料を回転する工具で混ぜ合わせ接合します(図2)。このように摩擦攪拌接合は、従来の電子ビーム溶接、アーク溶接、レーザー溶接といった接合方法とは全く異なり、材料を溶かさない方法であるため、接合後の材料の変形や反りを極めて小さくすることができる画期的な接合方法です。

 これまで、摩擦攪拌接合はアルミ合金を対象に鉄道車両や船舶の構体等に実用化されていましたが、銅合金については、研究段階にとどまっていました。しかし、このたび当社と株式会社日立製作所殿は、共同研究において、工具や接合条件などを検討することにより銅の摩擦攪拌接合の実用化に成功するとともに、それを応用して世界で初めて摩擦攪拌接合による銅バッキングプレートの量産を開始したものです。なお、銅バッキングプレートへの摩擦攪拌接合の適用については、当社と株式会社日立製作所殿と共同で特許を出願しています。

 本バッキングプレートの特長は、下記のとおりです。

A. 接合時の温度が低く、熱変形が小さいため、接合後の部材の寸法精度が向上します。(図3)
B. 材料を溶かさないで接合するため、接合部の組織は鋳造組織ではなく、加工組織となります。したがって、機械的強度に優れています。(図4)

 当社では、これらの特長をいかし、今後需要の伸びが期待できる液晶ディスプレイ、半導体デバイス、CD・DVDなどの記憶媒体製造用として、積極的に事業を展開していく所存です。
 なお、製造は当社連結子会社である日立伸材株式会社が行い、販売は当社が行います。

*1 スパッタリング装置
 スパッタリングとは、図5のようにターゲット材に粒子をぶつけることにより、基板に薄膜を形成する製造方法です。バッキングプレートはそのターゲット材の裏板となります。

用語説明

  • 鋳造組織:金属・合金を溶かして固めた状態のままの微細な構造。
  • 加工組織:鋳造組織に圧延などの加工を施した微細な構造。

日立伸材概要

社名:日立伸材株式会社
所在地:茨城県土浦市木田余町3550
資本金:8千万円(2001年3月31日現在)
売上高:3,499百万円(2000年3月期)
当社の持ち株比率:100%
従業員数:195名(2000年3月31日現在)

以上

図1 パッキングプレートの外観

  • 図1

図2 摩擦攪拌接合の原理

  • 図2

図3 従来法との変形の比較
*FSW(Friction Stir Welding)摩擦攪拌接合

  • 図3

図4 従来法との機械的性質の比較

  • 図4

図5 スパッタリング

  • 図5