2001年 旧 日立電線ニュースリリース

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ICカード、ICタグビジネスへ参入

 このたび当社は、125kHz非接触式ICカード、非接触式コイン型ICタグおよび接触式ICカード用モジュール基板の生産体制を整え、これらのビジネスに本格的に参入することになりました。
 ICカード、ICタグは、従来の磁気テープ方式のものに比べて、記憶容量が大きく、高いセキュリティが実現できることから、欧米では接触式ICカードは公衆電話用に、さらに非接触式ICカードは様々な物品の管理等に広く用いられています。現在、日本でも交通分野に定期券として非接触式ICカードを用いる計画があるなど、今後大きな市場展開が予想されています。
 当社では、既にICカード、ICタグとも、それぞれ月5万個の量産体制を整えており、さらに平成15年度にはそれぞれ生産能力を10倍にする予定です。また、このビジネス全体で、平成13年度は約5億円、平成15年度は40億円の売上高を見込んでいます。

 当社のICカード、ICタグビジネスの特長は、下記のとおりです。

1.非接触式ICカードの製造販売

(1)125kHz非接触式ICカードで、50cmの通信距離を実現
 非接触式ICカードは電波を受けるアンテナと半導体チップから構成され、周波数は、主に125kHzと13.56MHzが使用されています。一般的に、125kHzのカードは、13.56MHzに比べて通信距離が長く、水の影響を受けにくい利点があります。一方、アンテナとして使用されるコイルの形状については、13.56MHzでは4~6巻きですむのに 対し、125kHzでは200回以上巻く必要があり、コンパクトで安定した形状のアンテナを量産することが難しいという欠点がありました。そこで当社は、日本における代表的な巻線メーカーとしてこれまでに培ってきた技術をもとに、これらの課題をクリアし、安定した周波数のアンテナの量産体制を確立することができました。これにより、アンテナ性能を向上させ、最大で50cmの通信距離を可能にしました。

(2)環境配慮型樹脂PET-Gを使用
 上記のように、125kHzの非接触式ICカードは、200回以上巻いたアンテナを内蔵しているため、厚さをISO規格の0.76mmまで薄くすることが非常に困難です。
このため、カードの材質には加工性の高い塩化ビニル系樹脂を用いる方法が一般的です。今回当社は、工業用ゴム製品の開発製造で培った樹脂加工技術をいかし、これまで、気泡ができやすい、変形しやすい等、技術的な問題から125kHzのカードでは用いられていなかったPET-G(塩素系物質を含まない樹脂*1 )を使用した、薄くて平滑カードの製造に世界で初めて成功し、量産が可能になりました。

2.ICタグの製造販売およびシステムソリューションを展開

 当社では、非接触式ICカード製造技術を応用した、コイン形状(外径20~50mm)、のICタグも製造します。
 また、お客様のニーズに合わせて、リーダー/ライター*2 用の各種アンテナおよびリーダー/ライターの設計・製造も行います。
 さらに、主にICタグを用いた物流や工程管理などのシステムソリューションの構築も行います。

3.接触式ICカード用モジュール基板(インターポーザ)の製造販売

 当社は、半導体パッケージ用材料であるインターポーザとして広く用いられるリードフレーム、TABテープ*3 を量産していますが、この技術を応用して接触式ICカードのコネクタに用いるガラスエポキシを材料とするモジュール基板も量産化しました。一般的には、ガラスエポキシを使った基板はシートの状態で加工・製造しますが、当社TABテープと同様に、微細配線性、量産性に優れたR to R(リール ツー リール、Reel to Reel)方式でテープのまま加工することを特徴としています。

 このように、当社は非接触式ICカード、非接触式コイン型ICタグ、接触式ICカード用モジュール基板の製造販売から、それらを使ったシステムソリューションの構築まで、総合的にICカード、タグのビジネスを展開していく所存です。

以上

*1 PET-G
 PET-Gとは米国イーストマンケミカル社が製造する非結晶性コポリエステルで、塩素系物質を含まない樹脂です。通常のPET(Polyethylene Telephthalate)に比べて、強度および耐熱性は劣りますが、従来の塩化ビニルに近いカード加工性を有しています。
PETはテレフタル酸とエチレングリコールの2種類の分子が交互に重合し結晶状態を取りますが、PET-Gでは第3成分としてシクロヘキサンジメタノールが入るために非結晶状態になります。
*2 リーダー/ライター
 非接触式ICカード、ICタグは、内部に電池等の電源を持たないために、外部からの電波(チャージ波)をアンテナで受けることにより電磁誘導の原理で発電し半導体チップを駆動させます。この時に、外部からICカード、ICタグへ電波を与え、内部の半導体チップに情報を記録させる機能がライターで、その記録させた情報を読み込む機能リーダーです。当社のリーダー/ライターは、この二つの機能をあわせもった装置です。
*3 TABテープ
 Tape Automated Bondingの略。TABテープはポリイミドフィルムに銅箔をラミネートし、銅箔を微細加工することにより高密度配線層を形成したフィルムです。

本製品の製造を行う工場の所在地

〒317-0065 茨城県日立市助川町3-1-1 電線工場