1991年 旧 日立電線ニュースリリース

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長さ320mmの「長尺」直径4インチ
LEC法ガリウムひ素単結晶を開発

 このほど当社は、液体封止チョクラルスキー法(LEC法)を用い、直径4インチ(100mm)ガリウムひ素(GaAs)単結晶で、320mmの長さの長尺品の開発に成功しました。この結晶長320mm及び結晶重量17kgは、LEC法で製造したGaAs単結晶としては世界最大のものです。

 長い間懸案となっておりましたGaAs-LSIも、米国クレイ・コンピュータ社をはじめ、実用化の段階に入ろうとしています。このLSIに使用される半絶縁性GaAs単結晶は、通常LEC法により製造されていますが、実用化に際しては直径4インチのウエハが使用されています。

 当社では、LSIの研究開発段階から、LSI用半絶縁性GaAs単結晶の開発に努め、当社独自の3段階インゴットアニールを開発し、均一性に優れたウエハである「AU(Advanced Uniformity)グレード」を供給してきました。そして、4インチ時代に入ってからは、4インチ単結晶の開発をいち早く成功し、世界各社に供給してきました。

 一方、ユーザー・サイドからは、同一インゴットからスライスしたウエハの枚数が多ければ多いほど、プロセス管理が容易であることから、できるだけ長い単結晶の成長が求められていました。こうした要求に対して、当社では、昨年8月にLEC法直径4インチ単結晶では世界最長クラスの220mmの長さを記録、昨年11月からこの量産に入っています。この単結晶は、昨年の第3回アジア・パシフィック・マイクロ波会議付設マイクロウェーブ展'90に展示して好評を得ました。

 当社では、その後も、さらに長尺化するための研究を続け、このたび320mm長さの単結晶成長に成功しました。今回の主な技術的改良点としては、次の2点が挙げられます。

(1)成長途中での多結晶化の原因が個液界面の乱れにあることを明らかにした。

 大型結晶は、成長の途中で多結晶化がしやすいため、これまでは長さが100~200mm(7~10kg)のものが市販品の主流となっていた。本長尺結晶の開発においては、多結晶化の主要因が結晶欠陥である転位の集積化にあり、転位集積化は、個液界面の乱れにより起こることを解明した。さらに、転位を集積化させることなく、単結晶を成長するための個液界面形状の臨界条件を把握した。

(2)個液界面形状を制御可能な熱輻射制御ホットゾーンを開発した。

 市販の高圧引上炉では、単一加熱方式が主流であるが、当社では早くから独自の設計による多分割加熱方式を採用してきた。320mm長尺結晶の開発に当たっては、その技術の蓄積の上に立ち、個液界面形状を制御する上で必須となる、結晶からの放熱量を精密に制御する熱輻射制御ホットゾーン(特許申請中)を開発し、適用した。

 現在当社では、この320mm長尺単結晶を量産するための検討を超大型炉で開始しておりますが、早ければ年内にも量産化できる見通しを得ています。なお、結晶の大型化に伴い、大型インゴットアニール炉の開発も併せて実施しており、従来以上の均一性を達成しえる見通しを得ています。なお、本成長技術の開発で、大直径化、長尺化の1つの壁を越えたと考えられ、次のサイズは、5インチを飛び越えて一気に6インチとすることも可能と考えています。

 当社では、昨年の9月にボート法(水平ゾーンメルト法)でも4インチウエハ用単結晶を開発し、既にその量産技術を確立しており、GaAs単結晶成長においては、世界をリードしたといえます。

以上