2000年 旧 日立電線ニュースリリース

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このニュースリリース記載の情報(製品価格、製品仕様、サービスの内容、発売日、お問い合わせ先、URL等)は、発表日現在の情報です。予告なしに変更され、検索日と情報が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。

光通信関連の新製品開発に成功

 このたび当社は、光通信関連の新製品「伝送速度10Gbit/sの光トランシーバ」と「光波長多重伝送用導波路型可変光アテネータ」の開発に成功しました。
 インターネットの普及やマルチメディアサービスの広がりに応えて、世界中で構築されつつある高速大容量光伝送ネットワークに対応する光部品の開発を求める市場の要望が強くなっています。これに対応して当社でも、複数の新製品の開発に取り組んでいますが、前記の2つの新製品は、その成果の一つということができます。
 今回、開発に成功した製品の内容は、下記のとおりです。

1.伝送速度10Gbit/sの光トランシーバ

 光トランシーバは、ルータや汎用コンピュータなどの情報通信・処理装置に組み込み、電気信号と光信号を変換する光部品です。本格的なマルチメディア情報社会を迎えつつあるなかで、大手企業やインターネット接続業者等からは、より大容量の情報通信装置の需要が高まっています。このため、そこに使われる光トランシーバについても、さらなる高速化が必要となっています。
 これまでも当社は、伝送速度が100Mbit/sから2.5Gbit/sまでの光トランシーバを開発、量産化してきましたが、さらなる高速化の流れの中で、従来製品の4倍高速となる伝送速度10Gbit/sに対応した光トランシーバの開発が緊急の課題となっていました。そこで、当社は、顧客密着型のマーケティングにより得たニーズ・情報をすばやく開発に結びつけるとともに、より小型で低消費電力な製品にするための多くの技術課題を短期間で克服し、このたび世界で初めてデータ通信機器用の10Gbit/s小型光トランシーバの製品化に成功したものです。
 製品仕様としては、伝送距離が2kmの短距離用から最長80kmの長距離用までのラインアップをそろえる予定です。また、通信回線の使用効率を高めるために行われる時分割多重伝送*1 用の時分割多重化回路は、通常は光トランシーバとは別に設置されますが、今回開発した10Gbit/s光トランシーバは、その中に時分割多重化機能が装備されているため、ルータメーカー等のお客様側での設計負担を大幅に軽減することができます。
 今後、当社は、このような競争力の高い製品を世界に先駆けて開発、市場に投入することで、ハイエンドのデータ通信機器用光トランシーバのリーディングサプライヤとしての地位をさらに高め、旺盛な需要に応えていく所存です。

2.光波長多重伝送用導波路型可変光アテネータ(VOA=Variable Optical Attenuator)

 米国を中心とした大手通信事業会社では、情報伝送容量を増やすために、高密度光波長多重伝送(DWDM)*2 システムの導入を行なっていますが、ますます情報通信量が増えていく中で、DWDMシステムのさらなる「多チャンネル化」が進められています。
 長距離伝送をするためには、伝送途中で減衰する光信号を、光ファイバアンプを使用して増幅することが不可欠です。しかし、一方で、波長により増幅率等が異なるため、受信側ではチャンネル毎に信号の強さにバラツキが発生してしまうという問題があります。従って、長距離伝送において多チャンネル化をすすめるためには、チャンネル毎の信号の強さのバラツキを抑える技術が不可欠となっています。
 このバラツキを抑えるのが可変光アテネータ(以下「VOA」といいます。)です。送信側にVOAを配置し、チャンネル毎に異なる増幅率の違いや、中途損失のバラツキといった光路の特性にあわせて光入力を調整することにより、受信側での光出力を一定にさせることができます(図1参照)。

図1 可変光アテネータを用いたWDMシステム

図1 可変光アテネータを用いたWDMシステム

 従来のVOAは、光ファイバ内で、遮光板を用いて光出力を調整(メカニカル型)していましたが、使用条件により可動部分に故障が発生しやすい等、信頼性の点で問題がありました。今回、当社は、光合分波器等で高い技術力と実績をもつPLC(Planar Lightwave Circuit)*3 技術を用いて、導波路型VOAを開発したものです。今回の新製品は、熱光学効果*4 という原理を利用し、ヒータで加熱してPLCの屈折率を変えることにより、光の減衰量を制御するものです。導波路型VOAには可動部分がないため、従来のメカニカル型VOAに比べて、信頼性を飛躍的に高めることができたもので、これにより、サービスの中断が許されない幹線系でも、安心して使用することが可能になりました(表1参照)。

表1 可変光アテネータ比較

表1 可変光アテネータ比較
 

 今後とも、当社では、PLC技術を応用したWDM用光デバイスの分野において、市場や技術動向をいち早くつかみ、さらなる新製品開発につなげることによって、積極的なビジネス展開を図っていく所存です。

 なお、これら新製品は、7月11日(火)から14日(金)まで幕張メッセで開催されるインターオプトの当社ブースにて、温度無依存対応導波路型光合分波器や光スイッチといった、その他の開発製品とともに展示される予定です。

*1「時分割多重伝送」
 比較的低速の複数の信号線に対して、一本の高速回線を一定時間毎に割り当てることにより共有化する技術。
 今回開発した10Gbit/sの光トランシーバは、16本の伝送速度622Mbpsの電気信号と1本の伝送速度10Gbit/sの光信号を相互変換する機能を持っている。
*2「高密度波長多重伝送」
 光ファイバを使った通信技術の一つ。波長の異なる複数の光信号を1本の光ファイバに同時に入射し伝送することにより、光ファイバ1本あたりの情報伝送量を飛躍的に増大させる技術を「波長多重伝送=WDM:Wavelength Division Multiplexing」という。情報量の需要増加に対して、波長数を増加させることで対応することができるため、新たに伝送路そのものを増やす場合と比較して、経済的に情報伝送量を増大させることができる。WDMをより高密度化したものをDWDM:Dense Wavelength Division Multiplexing「高密度波長多重伝送」という。
*3PLC:Planar Lightwave Circuit「平面光波回路」
 ICやLSIの微細な構造を形成する際に用いられるフォトリソグラフィやドライエッチングといった半導体プロセスの技術を応用して、石英基板等の上に光回路を形成したもの。パターンによりいろいろな特性を付与することができる。
*4熱光学効果
 屈折率などの光学特性が温度によって変化する現象。このため通常は導波路技術を用いた光部品は温度を一定にする必要があるが、逆にこの特性を利用したのが今回の製品。導波路の温度を変えることで、積極的に素材である石英ガラスの屈折率を変化させ、光路を制御することにより光出力を調節する。