1992年 旧 日立電線ニュースリリース
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直径6インチLEC法ガリウムひ素単結晶の開発に成功
このほど当社は、液体封止チョクラルスキー法(LEC法)を用い、直径6インチ(150mm)ガリウムひ素(GaAs)単結晶の開発に世界で初めて成功しました。今回開発しましたので、全長170mm、重量17kgのGaAs単結晶です。
LSI用のチップは、LSI集積度のアップに伴い、そのサイズも大形化する傾向が強くなっています。例えば、15mm×15mmのチップを想定しますと、1枚のウェハからのチップの取得可能数は、4インチでは21個、6インチでは52個と、6インチ化することにより約2.5倍となり、ウェハの大直径化は、生産性向上の面で大きなメリットがあります。そのためシリコンデバイス関係では、既に直径6インチウェハが主流を占め、さらに直径8インチウェハに移行しつつあります。
一方、最近漸くGaAs-LSIも本格的に実用化され、多くのデバイスメーカーが直径4インチのGaAsウェハを使用し始めており、ウェハの大直径化は、チップサイズの大形化の進行に応じて今後もさらに進むものと思われます。こうした背景から、当社では6インチGaAs単結晶の開発に取り組み、今回これに成功したものです。
当社におけるLEC法によるGaAs単結晶の大直径化の歴史は、1981年に2インチGaAsウェハの量産を開始したのを皮切りに、1983年には3インチの量産、そして1989年には4インチの量産と、着実に進展してまいりました。
一方、単結晶の長尺化にも精力的に取り組み、昨年、直径4インチGaAs単結晶としては世界最大の320mm長のものを開発し、多くの関係者、専門家より高い評価をいただきました。今回、LEC法により直径6インチGaAs単結晶を世界に先駆けて当社が開発できましたのも、今までに培ってきた結晶成長技術、熱処理技術等の多くのノウハウの蓄積に負うところが大きいと言えます。
特に、今回の開発における特徴的技術としては、単結晶成長途上での固液界面の形状制御技術を挙げることができます。この内容は、次の通りです。
(1) | 当社では、昨年の4インチ長尺GaAs単結晶の開発時に、大形結晶の成長途上で発生しやすい多結晶化の主原因が結晶欠陥である転位の集積化であること、転位の集積化は固液界面の乱れが原因していることを解明しました。さらに、転位を集積化させることなく単結晶を成長させるための固液界面形状の臨界条件を把握し、その条件を制御・実現するのに必須となる、結晶からの放熱量を精密にコントロールする熱輻射制御ホットゾーンを開発しました。この技術を今回の大直径結晶成長にも適用したものです。 |
(2) | 一方、ウェハの大直径化、即ち、その面積が拡大しますと、ウェハ面の中央部と周辺部の電気的特性等の均一性が低下する虞れがあります。これは、中央部と周辺部とで結晶化(固化)時期のズレが大きくなるためです。そこで、前述の熱輻射制御ホットゾーンに改良を加えて、結晶化時期のズレの原因となる固液界面の周辺部の凹面化及び中央部の凸面化を制御させ、できるだけ界面をフラット化できるようにしました。これにより、ウェハ面内での結晶化時期がほぼ同じになりますので、電気的特性等の均一性低下を防止することが可能となりました。 |
こうした固液界面の形状制御技術により、今回開発した6インチGaAs単結晶は、従来の4インチGaAs単結晶のものと同等の特性が得られています。
以上